自然のはなし-132回 コウガイビル

自然のはなし



コウガイビル

渓谷や低地ジャングルのじめじめした場所を歩くと、数十センチもあるヒルのようなナメクジのようなヌラヌラした生物が這っているのを見かけることがある。

頭の先がT字型に二つに分かれてちょうどシュモクザメのようになっていたら、それはコウガイビル(Land Planaria)だ。実際、英語では俗名の「ハンマーヘッド・ワーム」と呼ばれることもある。和名の「コウガイ」を漢字で書くと「笄」。昔の女性が髪を結う時に使う道具に似ているためについた。

扁形動物門ウズムシ(プラナリア)目の動物で、和名にヒルと付いているがヒル(環形動物)とは赤の他人である。もちろんナメクジ(軟体動物)の仲間でもない。ナメクジやカタツムリはむしろコウガイビルのエサにされてしまう。扁形というだけあって身体は平たく、長さが数十センチもあっても厚みはせいぜい数ミリである。

粘液で包まれているため陸地を移動できるのだが、この身体にうっかり触るとベトベトしてなかなかとれない。慌てて振り払おうとすると、柔らかく平べったい身体だから簡単に千切れてしまったりする。しかし心配はご無用だ。プラナリアの仲間は再生能力が非常に高いことで知られる。コウガイビルも再生能力が高く、二つや三つぐらい分割されても数日すると再生するのだ。

コウガイビルのさらに面白いところは口の場所で、胴体の真ん中ぐらいの腹側にある。獲物を見つけて巻き付くと、口から消化液を出す器官が飛び出てくる。獲物は溶かして飲み込むのだ。口は肛門も兼ねている。マスクとパンツを兼用できるのはスゴイ(?)。

コウガイビルは陸生の無脊椎動物では、フグ毒で知られるテトロドトキシンをもつことが初めて確認されている。なんのための毒かという問題だが、護身用に使っている以外に捕まえた獲物がジタバタしないように麻酔代わりに使っている可能性が考えられるという。

 

伊藤 祐介  プロフィール
動物学者になりたかったのになぜか卒論は「老子研究」。在馬20年目。海外放浪歴も、ついに32年!

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