自然のはなし-139回 シャチ

自然のはなし

シャチ

二頭のシャチ(Killer whale)が昨年7月、トレンガヌ州沖の海底油田掘削リグ周辺で遊泳しているのを作業員に目撃された。ランタウ・アバン水産研究所(FRI)によると、同州沖でシャチが確認されるのはこれが初めてだという。

これまでマレーシア近海におけるシャチの目撃情報は主にサバ州東部に集中しており、今回半島東海岸沿岸にも回遊していることが分かったことはシャチの生態を知る上で重要だ。

ダイビングポイントとして有名なサバ州南東部シパダン島周辺では、以前からシャチが目撃されていた。最近では2017年には遊泳するシャチ群れの動画をダイバーたちが撮影。2019年にはシパダンに近いカパライ島南方で、海中でマンボウを食べているシャチが目撃された。今年13日には、再びシパダン付近で四頭の群れがダイバーたちによって目撃された。四頭のうち二頭はこどもだったという。

シャチは、メスが閉経後も長生きする数少ない動物であることでも知られる。シャチのメスは40歳ぐらいまで出産するが、その後も50年ぐらい生きるという。こうした例はヒトなどわずかな種しか確認されていない。閉経後も長生きするということは、母系家族を構成するシャチにとって、メスの「経験」が「出産」だけにとどまらず群れにとって重大な役割を果たしていることを示している。実際、年長のメスが群れにいる場合、孫世代の生存率が高まるという。

マレーシア近海でみられるシャチはサバ州とフィリピンの間にあるスールー海とスラウェシ島北方のセレベス海を回遊していると考えられている。シパダンはこの「海の回廊」沿いに位置しているのだ。冷たい海を好むイメージが強いシャチだが、実は世界中の海に生息している。生息範囲が広いだけあってタイプもA、BCDの4つあり、最近の研究でDタイプは別種である可能性が指摘されている。

僕は20年以上も前に南極海で長時間にわたってシャチの群れを観察する機会があったが、あの勇姿をぜひマレーシア近海でも見てみたいものだ。

伊藤 祐介  プロフィール
動物学者になりたかったのになぜか卒論は「老子研究」。在馬20年目。海外放浪歴も、ついに32年!

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