自然のはなし-141回 トウサゴヤシ

自然のはなし

トウサゴヤシ

前回エビと共生するハゼの話をしたので、今回はアリと共生する植物のお話。アリと共生する植物をまとめてアリ植物などと呼ぶ。グループパワーを発揮し向かうところ敵なしといったアリ軍団に住処を提供する代わりに、アリが植物の心強い用心棒になってくれるという寸法だ。

アリ植物には種子植物からシダ植物まで様々あるが、たいてい茎やコブのような場所をアリに住居として提供している。太っ腹な家主の中にはアリが好む蜜を分泌するという「賄い付き」サービスを提供している場合もある。もっとも植物の方もアリに用心棒になってもらえるだけでなく、アリが出した糞や食べかすが肥料として使えるというメリットもあるようだ。

僕が以前、サラワク州グヌン・ムル国立公園でみつけたアリ植物は、トウ(籐)の仲間のトウサゴヤシ(Korthalsia)だ。トウの英名であるラタン(Rattan)はマレー語(Rotan)から来ているので、広い意味でマレーシアの「ご当地植物」といってもいいだろう。トウは繊維が長く頑丈なので、いわゆる籐家具の材料として使われることで知られる。

トウサゴヤシはヤシ科の植物だが、他のヤシ科と異なり蔓のような茎を伸ばして成長する。この茎には節があり針のような鋭いトゲがびっしり生えている。トゲだけでも十分な防御態勢を敷いているように思えるが、さらに茎の内部にオオアリを住まわせている。

オオアリはカイガラムシを「家畜」として巣に運び込む。カイガラムシは甘い蜜を出すので「カイガラムシ農場」をつくるのだ。カイガラムシは樹液を吸ったりするので植物にとっては害になるのだが、トウサゴヤシにとってはたとえ樹液を吸われてでもアリに居てもらった方が得なのだろう。

トウサゴヤシに住むオオアリは、「農場」を守るべく敵を察知すると集団で一斉に身体を震わせてザワザワという大きな警報音をたてる。僕も最初は何か大きな生き物がいるのかと思ったくらいだ。トウサゴヤシにオオアリがいるのをみつけたら、ザワザワを経験できるかもしれないのでぜひ触ってみよう。

伊藤 祐介  プロフィール
動物学者になりたかったのになぜか卒論は「老子研究」。在馬20年目。海外放浪歴も、ついに32年!

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