自然のはなし-144回 マレーヤマアラシ

自然のはなし

マレーヤマアラシ

マレーヤマアラシ(Malayan porcupine)は和名にも英名にも「マレー」とあるように、立派なご当地動物だ。インドシナ半島や中国南部、スマトラ、ボルネオにも分布するなど生息範囲が広い。地上性・夜行性で森林に住み、植物の根や果実、樹皮、昆虫などを食べている。

代名詞となっている全身を覆う鋭い針は、毛が硬く変化したもので針毛という。中心部分が空洞になっていて、まるでプラスチックのようだ。敵に出会うとこれを逆立てて振るわせ、カタカタ音を鳴らしながら後ろ向きに突進して威嚇する。

針毛も毛には違いないから簡単に抜け落ちる。相手に深く刺さると針毛は抜けるが、簡単に抜けないので相手は長い間痛みに苦しむ。

昔はヤマアラシがゲゲゲの鬼太郎の髪の毛針のように針毛を飛ばして攻撃すると信じられていたが、これはさすがにないようだ。生まれる前からカチカチ針毛だとさすがに困るから、こどもの頃は細くて柔らかい。赤ちゃんが誤って母親を針毛でケガさせる心配はないのだ。

針毛は両端が白、真ん中部分が黒っぽい茶色で、遠目には黒白に見える。偶然かもしれないが、スカンクのように「近づいたらエラい目に遭うぞ」という警告色になっているのかもしれない。モノトーンで地味にみえるが、色の区別がつかない動物は多いのでむしろハッキリしたモノトーンの方が「目立ち」効果はあるのだろう。ヤマアラシは米大陸にも生息するがかなり遠縁らしい。

マレーヤマアラシの針毛はスベスベしているが、アメリカヤマアラシの針毛の先には細かい突起があり「返し」のようになっているため刺さるとより抜けにくいという。見た目が似ているのになぜこうした微妙なところで違いがあるのか考えてみると楽しくなる。

僕は残念ながらマレーシアで野生のヤマアラシを見たことがないが、スリランカのヤーラ国立公園で近縁のインドヤマアラシを見たことがある。自動車が横を走ってもなんのその、白昼堂々悠々と道路脇を歩いていた。この国立公園にはヒョウやナマケグマという肉食動物がいるのだが、ヤマアラシの敵ではないらしい。

伊藤 祐介  プロフィール
動物学者になりたかったのになぜか卒論は「老子研究」。在馬20年目。海外放浪歴も、ついに32年!

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