自然のはなし-143回 ヤイロチョウ

自然のはなし

ハリナシミツバチ

ヤイロチョウ(Pitta)はその和名の通り、色鮮やかで美しい鳥だが見つけるのはなかなか難しい。

僕がよく行くクアラセランゴール・ネイチャーパークにはマングローブヤイロチョウ(Mangrove pitta)が生息しているのだが、数回ちらっと見た程度。じっくり見ることができたのはサラワク州グヌン・ムル国立公園が唯一で、そこで観察できたヤイロチョウの一種、ムラサキヤイロチョウ(Garnet pitta)は赤い頭がよく目立ち、背中は青、紺色で腹は赤黒い姿。うっそうと茂った熱帯雨林の中を歩きながらエサを探していた。

ヤイロチョウの仲間は昼行性であり、縄張り意識が強くよくさえずっている。近くにいるのが分かっているにも関わらず見つけるのが難しいのは、警戒心が強いというのもあるが、生息地が暗い森林の地面近くだというのが大きい。

じめじめした地表にはミミズや昆虫がたくさん生息しており、これらがヤイロチョウのエサになる。ヤイロチョウは、スズメ目の中で最大の嗅球(きゅうきゅう)をもっているらしいことが分かっている。嗅球というのは脳にある臭いを感じる組織だ。臭いに敏感であることは、暗い地面でエサを探すのに有利となる。

そうした生活環境から、ヤイロチョウはさえずる時や夜寝る時以外は地面にいる。1日のほとんどを高さ2メートル以下の範囲で生活しているという研究もある。飛べる鳥でありながらヤイロチョウの一生は森林の中をエサを探して歩くことに費やされているといっていいいだろう。

ヤイロチョウは倒木や落ち葉に覆われている森を長時間歩く必要から、身体の割には脚が長い。一方で尾羽が極端に短いので頭・身体が不格好に大きくみえる。美しい鳥ではあるが、どうも身体のバランスが悪いのだ。

尾羽が短いということは、飛行する際に急ブレーキをかけたり急に方向転換するのが苦手だということを意味する。長時間空高く飛ぶことなく、森の中を歩いて過ごすにはこれで十分なのだろう。尾羽が短いことは地面を歩く際に邪魔にならないという利点にもなる。不格好にも理由があるのだ。

伊藤 祐介  プロフィール
動物学者になりたかったのになぜか卒論は「老子研究」。在馬20年目。海外放浪歴も、ついに32年!

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