2010年9月-シロガシラトビの巻き

  • 2010/9/5
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 ランカウイ島クア・タウンのフェリー乗り場近くに、身体が赤茶色、翼の先がこげ茶、頭から首にかけて白、という非常に目立つ姿をした猛禽類の大きな彫像がある。必ずといってよいほど観光案内書に写真が載っているこの像は、高さ12メートルもありランカウイの象徴となっているが、実際のところ何の鳥なのか知らない人も多い。なかには何を間違えたのか「ハクトウワシ」なんて呼んでいる人もいるが(ハクトウワシは北米に分布、米国の国鳥)、本当の名前は「シロガシラトビ」(BrahminyKite)。なんとワシやタカといった格好のよい名前ではなく、あのピ〜ヒョロロのトンビの名で呼ばれているのだ。

 たしかに全長は50センチ前後とやや小型。もっとも英語のガイドブックなどでも、イーグル(鷲)と紹介されていたりするのでハクトウワシと間違う人がいても無理もないが…。

 マレー語でワシはHelang」。「He」 が省略され、それにこの島の特産品である大理石を意味するサンスクリット語の「Kawi」が付いて、ランカウイ(Langkawi)になったというわけで、ランカウイの地名の由来になった由緒正しい(?)鳥なのだ。「Brahminy」というのはインドのバラモンのこと。格好のよい姿がインド神話に出てくるクリシュナ神の乗り物である神鳥ガルーダのイメージと重なり、そう呼ばれるようになったといわれる。

 トビというと「トビがタカを生む」という、トビをタカより一段ランクの低い鳥かの如く扱う諺で有名だが、ワシやタカのように狩りだけに頼らず、死体でも落ちているものでも何でも食べるためにそうみなされているだけで、それは言い換えればトビが非常に柔軟な鳥であることを示している。

 実際ランカウイだけでなく、マレー半島やインドシナなど東南アジアの沿岸部に広く分布し、魚やカニ、トカゲ、カエルなど様々な海辺の生物を食べる、実に適応性の高い鳥なのだ。

 クアラセランゴール・ネイチャーパークではほぼ100%の確率でみることができるが以外と警戒心が強く、近づくとすぐに飛び立ってしまう。じっくり観察するのが難しい鳥だ。

伊藤祐介

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