2011年3月-イノシシ

イノシシ(wildboar)は、マレーシアに住む大型哺乳類のなかでも最も頻繁に見ることのできる動物の一つだ。ご存じの方も多いと思うが、生物学的にはイノシシは家畜の豚と同じである。マレー語で「babi hutan」(森の豚)と呼ばれているように、マレーシアでも一般的に豚と同類とみなされているので、豚を不浄な動物だとするイスラム教徒は食べないことになっている。

個体数が多いわりに食べる人が限定されるためか、日本では珍重されるイノシシ肉(ボタン肉)がごく普通の中華料理屋のメニューに載っていたりするので、食べたことのある人も多いだろう。日本の田舎では、イノシシというと決まって厄介者、危険物、猛獣扱いだ。九州の実家の近くでも、イノシシに畑を荒らされたとか飼い犬を殺されたといった話を聞く。イノシシの牙は非常に強力で、ガブッといったまま猛スピードで走り抜けるので大きな傷ができるのだ。人が襲われて大けがを負うこともある。

タマン・ネガラ国立公園のジャングルを歩いていると、時々群れで走っていくのに出くわす。ジャングルだけでなく公園事務所のある人里にも出没するのだが、いつも無言でドドドド~と走り去っていくのでほとんどが一瞬の出来事である。両親があそびに来たとき奮発して公園事務所のある「ムティアラ・リゾート」のコテージに泊まったが(いつもは質素に観光小屋泊まり!)、リゾート内をウリボウ(イノシシの子)を連れて傍若無人に走り抜けていくのを見て両親はたまげていた。

非常に賢い動物なので、追いつめたりしない限り無闇に正面切って向かってきたりはしない。お互いに知らなかった振りをして通りすぎる、というのが相場のようだ。「猪突猛進」という言葉とは裏腹になかなか思慮深い動物なのだ。姿を見ることがなくても、山の中を歩いているとイノシシが土をほじくった跡をひんぱんに目にする。カブトムシの幼虫や木の根っ子を食べているとみられるが、大きな2本指の足跡がクッキリ残っているのでイノシシと分かる。よく絵に書かれているイノシシは2本指だが、実際は指は4本ある。蹄がある2本だけが目立つのだ。

こわもてイメージのイノシシだが、なんと野生のイノシシに手ずから餌をあげたり、触ったりできるところがクアラルンプール郊外にある。その話はまた次回に。

伊藤祐介

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