2011年2月-カブトガニ

 生きた化石と称され、古くから形を変えていない動植物はシーラカンスやメタ セコイア、オウムガイなどい くつか挙げられるが、マレーシアの海岸部に広く生息す るものとしてはカブトガニ (Horseshoe crab)が代表格だ。 カニという名前がついているが実際はクモなどに近い動物で、古生代の半ば頃から生き延びてきたというのだから恐れ入る。たまに魚市場やシーフードレストランな どで食用として見かけるこ とがあるが、僕はマングローブが間近に迫るクアラセランゴール・ネイチャーパークで生きた野生のカブトガニを観察する機会を得た。

 日本にいるカブトガニより少し小柄なミナミカブトガニ(Coastal horseshoe crab)という種類で、10本ある足の1本1本にハサミがついているという念の入りよう。ただしオトヒメエビのハサミのような可愛らしいもので、挟まれてもあまり痛くはない。目は頭と胸が合体した丸い甲羅(頭胸)の上、やや前方に2つほどわずかに突き出ており、周囲から接近してくる敵を察知するのにはよさそうだが、すぐ前方や足下を見ることはできそうもない。したがってカブトガニはエサを見ずに足で触った感覚だけで採っているはずである。食べているものを見ずに食事するのだからきっと味気ないだろうな。

 甲羅状の頭胸部に加えてその姿を特徴づけているのが、体長の半分を占めようかいう長いシッポ(尾剣とい う)である。何のためにこんなに長いのかという問題だ が、しばらくカブトガニと遊んでいて気付いた。尾剣の先は堅くて鋭いものの振り回したりペンペンと叩いたりするのが関の山で、敵を突き刺すことは出来そうもな い。しかし身体の後ろ半分がいくつかの節になっているので可動範囲は案外広く、 腹側に曲げると頭の前まで 180度、背中の方には 90 度も曲がるのだ。意地悪して裏返しにして地面に置くと (ゴメンネ)、盛んに尾剣を腹 側に曲げたり背中側に曲げ たりしてジタバタする。そう するとお碗状の頭胸の丸みがうまく作用し、尾剣が支え の軸となってクルリと横を 向く。そこですかさず 10 本の足をウリャウリャーと伸ば して何かに引っ掛ければ、簡 単に元に戻ることができる のだ。尾剣がまったくなかったら、ひっくり返ってしまった場合に下手をすると起き 上がれなくなってしまうだろう。ちなみにカブトガニは 泳ぐときは裏返しになって浮かんで泳ぐそうだが、その際には尾剣が舵の役目を果 たしているといわれる。姿格 好も変わっているが行動も変わっているのだ。

伊藤祐介

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