2011年4月-イノシシその2

 前月号に続いてイノシシ(wildboar)の巻の第二弾。マレーシアのイノシシも人を襲うことがあるのは時々新聞でも報じられているので明らかなのだが、餌が豊富にあるためか,はたまた温暖な気候がなせる技なのだろうか、日本のイノシシに比べると格段に温厚な気がする。

 クアラルンプール東部のアンパンの森林では、れっきとした野生のイノシシが餌付けされている場所がある。ボランティアの人によるとイノシシは3つの群れから成り、薄暗くなった午後7時半ごろから出てくるのだそうだ。

 先日僕が見に行った際には、全部で11頭が現れた。大勢の見物人がいるにもかかわらず薮から次々と姿を現し、ウリボウ(イノシシの子)も3頭ほど含まれていた。投げ与えられたパンの耳やピーナッツをガツガツ食い始めたのだが、やがて「もっとおくれよ」とばかりに頭を振り振りアピール。常連さんとおぼしき人たちが近寄って手の平に載せてさしだすと、なんとイノシシが飼い犬のように手の平の餌を食べ始めたではないか。隣の人が手を伸ばして頭を撫でても気にする様子もなし。

 聞くところによると華人たちはイノシシを触ると何かの御利益があると考えているのだそうで、ナンバーズくじなどが当たりますようにと願掛けて触っているのだという。そのせいか見物人の大部分が華人で、インド系はちらほら、マレー系は皆無だ。

 さっそく僕も彼らに交じってイノシシに近寄って、ほおやひたいのあたりを撫でてみる。泥にまみれているものの体臭は感じられず、決して不潔な動物ではないということが分かる。皮膚がとにかく堅い、というのが触った際の第一印象。剥いだ木の皮のようで生き物のような感じがしない。面の皮が厚いというのはまさしくこのことで、毛もタワシのようにゴワゴワで触っていてあまり気持ちのいいものではない。イノシシには毒ヘビの毒が効かず反対に毒ヘビをムシャムシャ食べてしまうとは聞いていたが、実際に触れてみて事実に違いないと思った。ただし鼻先だけは豚と同じくピンク色の皮膚がむき出しなので、咬まれどころが悪ければ毒がまわる可能性はあるだろう。

 近くでみると以外と目が可愛らしくて賢そうだ。リラックスしてエサをもらっているようでいながら、きちんと周囲の安全を確認している様子が窺える。猪突猛進といった単細胞な性質で怖いという印象だったイノシシに対する見方が変わってイノシシ・ファンになった。

伊藤祐介

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