2011年8月-ウツボカズラ

 本連載もおかげさまで丸2年。今回、初めて植物を紹介するのだが、普通の植物では面白くないので、マレーシアが本場であるウツボカズラ(Pitcherplant)に登場願うことにする。特にボルネオはウツボカズラのメッカで、確認されているものだけで30種以上にのぼるそうだ。キナバル山などを訪れる人はぜひ観察して欲しい。

 ウツボカズラはご存知のように食虫植物の代表格で、捕虫器とよばれる袋状に変形した葉におびき寄せた虫を落とし、酵素を含む液体で消化し栄養にする。捕虫器の内部は虫が這い上がれないように上手くできており、ツルツルだったり下向きの返しのトゲを生やしたりしている。フタは雨などが入らないようにするためのもので、開けたり閉じたりはしない。僕が自宅で育てているウツボカズラは捕虫器の長さが6センチ、穴の直径が3センチ程度の可愛らしいものだが、ボルネオでは握りこぶしが入るビッグサイズのものをあちこちでみかけた。2009年にフィリピン南西部パラワン島で見つかった世界最大級の新種などは、捕虫器の直径が30センチほどもあるというのだから驚きだ。

 ところでウツボカズラの捕虫器がどのように成長するのか御存知だろうか? 

 僕が育てているウツボカズラを例にとると、まず株からツルが細く上に伸び、その先端に葉芽に似た形状のものがしだいに成長してきて、やがて重みで垂れ下がってくる。これは紙風船のようにペタンコに折り畳まれた状態の捕虫器で、十分に育つとやがて膨らんで袋状になるのだ。最初のうちは袋の中はカラッポで、十分に膨らんでからじわじわと消化液が出てくるようだ。問題はこのツルの途中にできる葉のように見える部分だが、よく観察すると葉脈がない。ここはつまりニセの葉で、捕虫器ができる前からあるために一見すると葉の先がニューと伸びて先端に袋をつけているように見えるのだ。ニセの葉であっても光合成はできるので、これならば栄養の少ないジャングルであっても運良く日の当たる場所であればラッキー。

 ウツボカズラは捕虫と光合成の両面作戦で厳しい環境を乗り切ろうとしているとてもカシコイ植物なのだ。なんだかダンナの給料が上がらないので住宅ローン返済のために奥さんがパートで稼いでいる共稼ぎ夫婦のようにみえなくもないが、ガンバッテ生きているという感じが何ともいじらしい。

伊藤祐介

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