2011年9月-ブタオザル

 東南アジアでオランウータンに次いで大型の霊長類はブタオザル(pigtailmacaque)だ。ブタのしっぽのようにチョロリとした尾が名前の由来。成長したオスは中型犬ほどもあり、体重は10キロにもなる。力が強く賢いので東南アジア一帯ではこれを飼いならしてヤシの実をとるのに使う。一回り小柄なカニクイザルだと力がないのでヤシの実をうまく取れないらしい。

 野生でも人馴れしていれば、クアラルンプールの近くではアンパン・フォレスト近辺で頻繁に見ることができる。毎日やってくる大勢の観光客にエサをねだるのだが意外と行儀がよく、カニクイザルのように強引にかっぱらっていったりはしない。
ようだ。なかには馴れ馴れしく人の肩に乗ってくる若いサルもいる。観光客の中にはどちらがサルか見分けがつきにくい人もいるので、僕は声をかける時には必ず「あなたの方が多分人間ですね」と確認するようにしている(ウソウソ)。フレイザー・ヒルに登るくねくね道の途中でたまにみかけるし、先日はマレーシア森林研究所(FRIM)のトレイルでもみかけた。生息範囲が広く出くわす可能性が高いのだが、あまり人馴れしていないヤツには気をつけたほうがいい。

 僕はオランウータンのリハビリテーションで有名なサバ州セピロックのジャングル・トレイルを歩いている時、うっかり人馴れしていないブタオの群れとモロに鉢合わせしてしまったことがある。気が付くと僕を中心として半径6〜8メートルほどの範囲にオスメス子供合わせて8頭ほどいた。
メスや子供はよほど驚いたのか完全に固まってしまっており逃げようともしない。ようやく身体がひと回りでかいボスとみられる1頭が肩をいからせながら近づいてきて、威嚇のためダッシュしてくる素振りを何度か繰り返した。角刈り頭のいかつい形相で、仁侠映画にでてくる高倉健のようだ(古い?)。さすがに「死んでもらいます!」とは言わないが、「噛みつかせていただきます!」とか「引っかかせていただきます!」と言いそうな険悪な雰囲気だ。

 僕はこの時点で数キロの山道を歩いてスタミナを消耗し、しかもヒルに何カ所か吸われ血の気が失せていたこともあって、あえて逆らわずおとなしく後ずさりしてその場を退散。こうしてブタオのボスと僕の間で繰り広げられたであろう凄絶な死闘は不発に終わったのだった。

伊藤祐介

 

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