2012年3月-トビトカゲ

 熱帯雨林が多く残るマレーシアは爬虫類や両生類の天国だ。ご存知のように変温動物である彼らは寒いのが苦手。常夏の気候はまさに彼らのためにあるようなものだ。大から小までサイズも生態も様々だが、なかでも東南アジアの熱帯だなと実感させられるのが「トビトカゲ(Flyin glizard)」である。

 体長は20センチ超で、あばら骨が左右5〜7本ずつニュッと伸びており、通常は折り畳んでいるが、いざとなるとこれを広げて皮膚を翼のようにして飛んで移動する。羽ばたいたりする能力はないので、「飛ぶ」というより「滑空する」というのがホントのところだ。僕がこれまで観察した限り、通常は数メートルがいいところで、フワーと飛ぶというよりパッパッと一瞬で移動が完了するという感じだ。

 飛ぶところを写真に撮ろうと思って近づいても木の裏に回り込んだりして、なかなかパーっとやってくれない。あまり飛ぶのが得意でないのを自覚しているのではないかと思う。長い距離を飛ぶのは、かなり敵に追いつめられたり近くに適当な木がない場合に限るようだ。

 アリが好物で、木の幹を移動しながら食事をする。オスの喉にはイグアナなどでみられる黄色い膜状のもの(咽喉垂=デュラップ)があり、ひくひく動かしている。縄張り争いの際に他のオスに見せつけるためともいわれている。

 学名にある属名「Draco」はドラゴンの意味で、恐らくこれを最初に発見した西洋人は「これぞ幻のドラゴンの子供だ!」と思ったと想像されるが、育てても一向にデカくならず火も吐かないのできっとガッカリしたに違いない。

 ところで翼がある生物といえば鳥類がその筆頭だが、最近の古生物研究の進展で鳥類の先祖が恐竜であるとの見方が有力になっている。トビトカゲは恐竜が進化する前の爬虫類から分かれたものだが、恐竜―鳥類とはまったく別の手法で飛翔する方法にたどり着いたともいえよう。クアラルンプール周辺ではマレーシア森林研究所(FRIM)、タマン・ネガラなどの森林でみることができる。

伊藤祐介

関連記事

コメントは利用できません。

アーカイブ

ページ上部へ戻る