2012年4月-ラフレシア

 世界最大の花として有名なラフレシア(Rafflesia)。マレーシアを代表する花といったらこれを挙げないわけにはいかない。花の直径は最大種で1メートルほどにもなるが、寄生植物で花以外には葉も茎もないという不思議な姿だ。ジャングルの中でブドウ科の植物のツルに根付いて栄養を吸収して育つ。最初はコゲ茶色の小さなデキモノのようだが、長い年月をかけて小ぶりのキャベツ大になる。ボルネオでしか見られないと思っている人も多いようだが、半島部でも内陸部に行くと見ることができる。ただ花が咲いても数日でしぼんでしまうので、話には聞くが実際には見たことがないという人も多い。なかなかお目にかかれるものではないので、地元民が立て札に「ラフレシアあります」などと書いて、観光客を案内していたりする。まるで「キレイな娘がいますゼ」とか言って誘ってくるポン引きの兄ちゃんみたいだが、ポン引きと違って情報はおおむね正しい。彼らはマツタケ採りのように独自のラフレシアの生息地を知っていて、これを見せ物商売にしているのだ。僕はペラ州ロイヤル・ベルム自然公園で群生を見る機会があったが、そこは満開状態やつぼみ、腐ったものなど様々な状態のラフレシアを十個以上、雨後のマツタケのようにかたまって生えている壮観な場所だった。決まった場所には時間をずらして次々とラフレシアが咲くわけで、道理でキノコ採りに似ているわけである。ラフレシアの花は肉厚でけっこう固い。受精するために必要なハエを呼び寄せる独特のニオイを発する。死臭に似ているとも表現されるが、僕はそう酷いニオイだとは思わなかった。九州の実家でよく春先に嗅いだサカキの花のニオイを強くした感じで、ちょっと懐かしい気持ちになった。そういえば職場近くのヤシの木に咲く花も似たようなニオイがする。虫を呼び寄せるために植物が共通して編み出したニオイかもしれない。ラフレシアのつぼみはまるで木でできたようにカチンカチンに固い。一方、開花が終った花はまるで木彫りの彫刻が腐ったみたいだった。

伊藤祐介

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