2012年9月-カザリオウチュウ

 ツバメのように左右に開いている尾羽が特徴のオウチュウ。ハイイロオウチュウというのもいるが、一般的に全身真っ黒である。オウチュウのなかでも変わった姿で異彩を放つのが、カザリオウチュウ(Racket-tailedDrongo)。尾羽の先がさらに細長く伸び、先端が楕円状に膨らんでいる。テニスラケットのように見えるというわけでこの英名がついた。

 オウチュウの全長は28センチメートルほどだが、カザリオウチュウは尾が胴体の長さを超すほど長いので40センチ以上はあるだろう。頭に冠毛があるのだが、生息地によってトンガリ具合にバリエーションがあるようだ。

 マレーシア森林研究所(FRIM)やタマンネガラ国立公園などでよく見かけるが、丸いラケット状の尾羽がひらひら揺れるので密林の中でも比較的見つけやすい。緑の濃いジャングルでは黒い羽色は以外と映える上に、これに特徴的な尾羽をつけているのだから枝に止まっていても飛んでいてもかなり目立つのだ。丸い尾羽は実生活ではあまり役にたちそうもないのだが(かえって邪魔?)、きっとメスにアピールするのに使っているのだろう。

 ところでオウチュウという不思議な和名の由来だが、江戸時代後期の鳥類図鑑「堀田禽譜」に描かれたオウチュウの絵にはクロドリ、ヤマツバメという銘が入れられており、オウチュウという名は見当たらない。虫を好んで食べるのは確かなのだが、だからといって「王虫」と思うのは早とちりで、漢字で書くと「烏秋」である。このことから僕ははたと気づいた。「烏秋」は北京語読みだと”ウーチュウ”だが、これが福建語読みだと“オーチュウ”となるのである。つまり福建や台湾での読みをそのまま日本にもってきて使っているのだと考えられる。実際、台湾などではよくみられる鳥なのだそうで、明治以降、台湾と日本の間で往来が激しくなってオウチュウという読みも輸入されたに違いない。オウチュウという呼び名はペリカンなどと同じで、つまりは外来語だったのだ。

伊藤祐介

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