2014年11月-カニクイザル

shizen マレーシアでもっともひんぱんに見られる霊長類がカニクイザル(Long-tailed Macaque)だ。ニホンザルと近縁(同じマカク属)で体長も同じぐらいだが、スリムで顔や尻が赤くない、尾が長いといった外見の相違がある。マレー語では「クラ(Kera)」という。これは威嚇の鳴き声からきたらしいが、実際には「クアッ、クアッ」というふうに聞こえる。

ニホンザルが丸っこい体形をして尾が短いのは、長い時間をかけて寒さに対応してきたものだ。かつて経営難に陥った北海道の動物園で、電気料金滞納のために暖房を止められカニクイザル10頭が凍死する事件があった。暖かいところから連れてこられたカニクイザルは寒さに対してはニホンザルほど強くなかったようだ。

カニクイザルはマングローブ帯など低地を好み、木の実や芽、花、昆虫、トカゲなどを食べているが、特にカニを獲って食べることから「カニクイ」の名がついた。もっともカニを常食しているわけではなく、メニューに載っているという程度。他においしいものが豊富にあればそちらを食べるのが高等動物の常だ。

以前、クアラセランゴール・ネイチャーパークで、日本のバラエティ番組のカニクイザル取材チームと出くわしたことがあるが、公園のレンジャーは「カニを食べているのは見たことがない」と断言していた。セーラー服姿の女性リポーターは困惑していたが、その後カニクイの場面が無事にオンエアされたかどうかは定かではない。

カニクイザルは都会の緑地帯でもみることができる。開発によって人間との生活圏が近まった場所では、サルが家の中に入り込んで荒らしたり、こどもに噛みついたりする事件が起きている。このあたりはニホンザルと生態系における位置関係がよく似ている。また人によってもち込まれたために東南アジア以外でも増えており、侵略的外来種ワースト100にもリストアップされている。みんな人間が原因なのに悪者扱いされるのはちょっと気の毒な気がする。

伊藤祐介

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