2015年4月-イソギンチャク

shizen お土産でもらったワケノシンノスを久しぶりに食べた。有明海沿岸の一部で食されている郷土食の一つなのだが、この奇妙な名前の食材の正体はイソギンチャク(Sea Anemone)だ。食用イソギンチャクの正式名は「イシワケイソギンチャク」というのだが、シンノスというのは「尻の巣」が訛ったもので、つまり食べたものの成れの果てが出るところのアレですな。見た目が似ているためにそう呼ばれている。地元ではこれを味噌煮にしたりして食べるのだが、生きている時のグニャグニャ加減からは想像できないコリコリした食感。見かけが不気味ということもあってか、この美食氾濫の時代にあっては食べたことのない地元民も多いと聞く。

それにしてもシンノスといいキンチャクといい、英名の優美な「海のアネモネ」とどうしてこれだけ印象が違うのだろう。英名はもちろん海にたなびく触手を花びらに見立てたものだ。熱帯の海でのダイビングの際に群生をみると、本当に花畑のように感じる。一方、和名は外部から刺激を受けたり干潮になった場合に、触手を縮めて口をすぼめた状態を「巾着」、つまり布袋に見立てたものであり、欧米よりも生態をよく観察したうえでの命名ともいえそうだ。イソギンチャクは刺しほう胞動物に分類される。なんとサンゴやクラゲの仲間なのだ。サンゴから固い骨格を抜いた状態、またはクラゲをひっくり返して岩にしっかり固定された状態を想像していただきたい。その名の通り、どれも刺胞というミクロの毒矢を発射する器官を持っており、これを使って獲物を捕えるのだ。

イソギンチャクは様々な生物との共生関係で知られる。共生相手の彼らはイソギンチャクの触手の陰に隠れ、その毒の威力を利用して敵から身を守っている。キンチャクガニに至ってはイソギンチャクをハサミに装着。タコなどの敵が来ると凶器のように振りかざす。なかでもクマノミとの関係がよく知られているが、その関係は非常に複雑で興味深い。その話は次号で。

伊藤祐介

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