2016年3月-サンバー

Clipboarder.2016.04.20-007 サンバー(Sambar)はアジアの広い範囲に生息するシカ。マレー語では「ルサ」(Rusa)といい、水場を好むため日本語ではスイロク(水鹿)とも呼ばれる。夜行性で日没後によく活動する。ジャングルをナイトウォークしたり、ナイトドライブするとよく見かける。

肩高は100〜150センチほど。オスは最大で体重350キログラムにもなる。斑点模様はなく体色は地味な褐色。ニホンジカやエゾシカの親戚だが、ツノがあまり枝分かれせず、根元と先の2ヵ所だけ分かれている。

単独行動することが多いが、メスが小グループをつくることもある。インドやマレー半島ではトラの「食事のメニュー」に載っていることで知られる。

パハン州タマン・ネガラ国立公園では、クンバン小屋などの観察小屋に宿泊すると塩場にやって来るのを観察することができる。ナトリウム不足を補う必要があるため、シカやバクなどの草食動物は岩塩が露出しているところなどに塩を舐めに来るのだ。人気の多いところでも余り気にならないらしく、公園事務所のあるムティアラ・リゾートの敷地に現れることもある。先日はボルネオのダヌムバレー・フィールドセンターで、数メートルの至近距離で出くわした。僕が寝ていたのはホステル。草をブチッブチッと引きちぎる音と咀嚼する音と、時折聞こえるため息をつくような声が闇のなかから聞こえてきて目が覚めた。足音を忍ばせて裏口から外に出る。旧正月の新月ということで辺りは真っ暗。音の聞こえる方向にヘッドライトを向けて点灯すると、何とわずか3メートル先にサンバーが佇んでこちらを見ている。

角が根元の一ヵ所だけ枝分かれした若いオスだ。目の高さはほぼ僕と同じ。10秒以上向き合っていたが、やがてホステル裏の藪に消えていった。これほど長時間、間近で観察できることは珍しい。向こうも面食らって逃げるタイミングを逸したようだ。貴重な体験だった。

伊藤祐介

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