2016年7月-ムツゴロウ

83Shizen-Bluespotted-Mud-Hopperマレーシアの海岸には干潟地帯やマングローブ帯が多く、トビハゼやムツゴロウ(Bluespotted Mud Hopper)の仲間、英語ではマッドスキッパーと呼ばれるオキスデルシス亜科の魚が多数生息している。
この仲間は皮膚呼吸の能力に秀でているため、魚なのに長時間水から出ていられるという特技がある。水深の浅い場所や干潟で移動できるよう胸ビレが発達しており、這うように進むことができる。水から出ることが多いために空中視力もいい。体内で生成されたアンモニアの、水中への放出が難しいために、アミノ酸に分解する能力を備えている。陸上生活に適した魚離れしたこれらの性質を獲得していったことが、2014年に発表されたゲノム解読結果から明らかにされた。
テレビの影響からか日本人の間で知名度が高いムツゴロウ属だが、他のマッドスキッパー・グループのオオトビハゼ属やトカゲハゼ属と区別がついていない人が多く、何をみても「ムツゴロウだ!」と呼ぶ人が多い点ではあまり欧米人のことを笑えない。
トビハゼやムツゴロウの最大の違いは食べ物だ。小さなトビハゼ属や全長30センチ近くになるオオトビハゼ属が甲殻類やゴカイの仲間、小魚などを主食としているのに対し、ムツゴロウは泥に付着している珪藻類などを食べている。ベジタリアンなのだ。
干潟は広いので彼らを見つけるのは簡単だが、接近して観察するのは案外難しい。有明海のムツゴロウ漁をテレビでご覧になったことのある方はお分かりのように、潟スキーでじわじわ接近し、10メートルほど離れたところから専用の竿で引っ掛けて捕獲していることからも分かる。
その点、僕の行きつけのクアラセランゴール・ネイチャーパークには汽水の大池があり、干潟がすぐ横にあるので、静かに近づけば数メートルの距離まで寄ることができる。オス同士が大きく口を開けて縄張り争いをしている様子は、ユーモラスでいつまで見ていても飽きない。

伊藤祐介

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