2018年6月-107回 ヒロオウミヘビ

  • 2018/5/31
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タイのピピ島はこれまで10回以上行っているが、先の中国正月のダイビング旅行ではウミヘビに2度も会う機会があった。夜行性のウミヘビは日中のダイビング中に出て来ることが少ないので、なかなかラッキーなのだ。
出会ったのはいずれも黒と青のシマシマ模様のヒロオウミヘビ(Banded sea snake)。一頭目は10メートルほどの深さの岩場にいた。1メートルほどまで接近して写真を撮ったが、最後までおとなしくしていてくれた。ご存知のようにコブラ科のヘビで強力な毒をもつので、迂闊に触ったりしないほうがいい。
二頭目は海面付近におり、まさにこれから潜水しようというタイミングだった。和名にあるように尾は平たくオール状になっており、泳ぎはなかなか達者だ。あっという間に僕らを追い抜いて潜っていった。
僕らに容易に発見されたように、ウミヘビにとっては身を隠す場所のない中層、海底に降りていく間が一番危険である。いつもこのような感じで急速潜航、急速浮上を行っているのだろう。このためウミヘビの潜航シーンを見たことがある人は少ないようだ。
以前、本連載で「ホタテウミヘビ」を紹介したが、今回のウミヘビは魚類ではなく爬虫類だ。肺呼吸だから息継ぎをする必要がある。どれだけ息が続くのかといえば、ヒロオウミヘビの場合、一回の息継ぎで50分ぐらいはもつらしい。代謝に要する酸素の量が多くないこと、皮膚呼吸ができることが長時間の潜水を可能にしているのだ。
夜行性なので、日中は岩場に上がって休んでいることが多い。ヒロオウミヘビには陸上性のヘビと同じく、腹板と呼ばれる横広のウロコが腹側にある。陸生のヘビはこれを手がかりに(腹がかり?)にして移動するのだが、腹板のあるヒロウミヘビも陸上での移動はなかなか達者だ。一方、3時間以上も潜水できるセグロウミヘビというウミヘビは、より水中生活に適した身体に進化したため、腹板が退化しており、陸上移動をすることができない。

伊藤祐介

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