2019年12月-125回 マメジカ

小型のシカの仲間にマメジカ(mouse-deer)という動物がいる。マレーシアで見られるマメジカは大小2種あり、小さい方は以前製造されていた国民車の名前にもなったマレー語名「カンチル」だ。スペルは違うが学名にも「Kanchil」としっかり「カンチル」が入っており、立派なご当地動物といえる。

肩高はわずか45センチメートル、体重は2キログラムしかない。世界で最も小さな有蹄類といわれている。原始的な性質を持っており、他のシカの仲間からかなり以前に分化して独自進化を遂げたと考えられている。一般のシカと同じく反芻を行うものの胃が未発達、犬歯が長いといった特徴がある。 ジャングルの奥地に行かないとなかなかお目にかかれないカンチルだが、かつては身近な動物だったらしく、これを題材とした民話が多数残されている。カンチルはたいてい知恵のまわる動物として登場する。 ある民話ではワニを利用しようとする、その名も「サン・カンチル」の話がでてくる。川を渡りたいサン・カンチルは、大ワニ「サンブアヤ」に「王様主催の晩餐会にワニたちも招待されている」ともちかけ、出席者の数を把握しておく必要があると言って川の手前から対岸まで仲間のワニたちにズラッと並ばせる。サン・カンチルはまんまとワニたちの上を走り抜けて向こう岸に渡ることに成功。ワニたちは騙されたことに気づいて怒るが、後の祭りというものだ。 どこかで聞いた事がある話ではないだろうか?そう「因幡の白ウサギ」だ。白ウサギは怒ったワニ(ワニザメ)に捕まって毛を剥かれてしまうが、カンチルはめでたしめでたしで終わるところが違う。どこでどうやってこれだけ酷似したの話ができたのか不思議だ。 不思議といえば、こうした、か弱く原始的なカンチルがよく今まで生き延びてきたなということ。知恵のまわる動物として人々に考えられてきた理由はこの辺りにあるのかもしれない。

伊藤祐介

関連記事

コメントは利用できません。

アーカイブ

ページ上部へ戻る