2020年 3月-128回 カリン

日本で街路樹といえばサクラやイチョウなどが多いが、常夏の東南アジアでは残念ながらサクラを育てるのは無理。東南アジアの各都市では、常夏の気候に合った様々な街路樹が植えられており、都市の気温上昇抑制のために一役買っている。タイ・バンコクでは国花にもなっているゴールデンシャワー、カンボジア・プノンペンではカエンボクが街路樹として植えられているケースが多いが、マレーシアではカリン(英名はAngsana tree、Burmeserosewoodなど多数)と呼ばれるマメ科の樹木が知られる。成長は早く、樹高は30メートルほどになる。マレー語では「ポコック・セナ」と呼ばれる。マレーシア半島部での開花時期は3月から4月にかけて。数ミリサイズの黄色の小さな花をたくさんつける。花期は1〜2日程度ですぐに散ってしまう。この辺りもサクラによく似ており、日本通のマレーシア人は「マレーシアのサクラ」と呼ぶ。シタン属に属していることから華人は紫檀と呼んでいるようだが、その開花時期からペナンの華人の間では「清明節の木」とも呼ばれている。街路樹としてカリンがもっとも元気なのはペナンなのだそう。最盛期は黄色の落花が周辺を覆いつくし、黄色一色になるという。シンガポール植物園によると、同国ではカリンがこれほど大きく育つことはないそうで、原因についてペナン植物園と共同研究が進められているという。
ちなみに「カリン」といえば、日本では道の駅などで果実がジャムに加工されたり果実酒にされて売られているものを指すが、こちはバラ科の植物。漢字表記(花梨)も同じながら赤の他人だ。地球温暖化を巡る議論はいまだ結論が出ていないが、もし温暖化が事実であればサクラもカリンも分布域が徐々に北上していくことになるだろう。そうなれば数百年後には日本のサクラは「マレーシアのサクラ」に取って代わられているかもれない

伊藤祐介

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