2010年3月-大厄の女②

 1月号でお話したことだが、超音波検査ですい臓に影が見えるため再検査が必要だと診断された。正直、「すい臓ってナニ?」という疑問がまず頭を過ぎった。生物で勉強したはずだが10年以上も忘れていた臓器。さっそくネットで検索してみた。「すい臓、超音波、影」などのキーワード。もちろん出てくるのは「すい臓癌とは?」。ガーン、癌? 沈黙の夫。その日以来、願掛けのようにお酒を飲まない日があったり、今飲まないともし癌だったら飲めなくなるんだから飲んじゃえ!と、飲む日が続いたり…。再検査までの1ヵ月半、不安と開き直りが入り乱れる日々を過ごした。

 再検査ではカメラを飲んで影の正体を確認することになった。腫瘍がみつかれば悪性か良性かを調べるためにカメラの先端から針を出し、細胞の一部を取り出すということだった。ドクター曰く「マレーシアでこのカメラを上手に操作できる医師は数人ほど。信頼のおけるベスト3のドクターをこの病院に呼んで検査をしてもらいましょう」。

 「まぁ〜、私のために…。ありがたや」と、感謝の意をドクターに述べると、「It’s OK, Actually she is my wife.(どういたしまして、まぁ、彼女は私の妻なんだが…)」。出た!!マレーシア人特有の口癖「Actually!」。なんだ、そういうことか。「嫁ハンかい! ファミリービジネスかいな!」と思わずドクターにツッコミを入れてしまった。ドクターは「?」という表情だったが、優しさと自信に満ち溢れる笑みを絶やさなかった。

 検査日当日、午前10時に入院手続き完了。元気なのに入院するものだからDVDプレイヤー、雑誌に本。前日から飲食が禁止されているので空腹は否めないが検査が終わったら食べようとお菓子やお茶も用意して行った。通された二人部屋で早速イヤフォンをつけてDVD鑑賞。午後1時、隣にいたおばちゃんがベッドごと運ばれていった。どうやら手術を受けるらしい。私は午後3時まで待たされ、やっと検査室に入った。

 中にはキャリアウーマン風の装いのドクターが直にビニールのエプロンをつけ、手には直径1センチ程のホースを持ち待機していた。え!?細い管って聞いていたのに、そんなゴン太入れちゃうワケ? 麻酔医も集まり準備万端! のはずが、コンピュータの電源が入っておらずその場でON。起動にしばし時間をとられる。その間、さっきまでの手術の様子を麻酔医が語っていた。どうやら危険なお産だったらしい。患者の前でそんな話をするか?いよいよ検査開始。麻酔を腕に即熟睡。気がついた時にはもう済んでおり朦朧としたまま病室へ戻った。

 すぐに検査結果は報告され異常なしとのこと。安心して深夜まで読書を楽しんだ。自分に余裕ができると隣が気になる。おばちゃんが手術後戻ってこない…。翌朝も戻らなかった。脱いだスリッパ、歯ブラシ、食べかけのお菓子がそのまんま。昼前に旦那さんがやってきた。仕切りを覗いて呆然としている。「まだ戻ってないよ」と声をかけると、「まだICUか…」と部屋を出て行った。大丈夫だろうか? 朝から喉の痛みがひどく、退院前にドクターに訴えた。彼は「フッ」と笑い、「Actually、予想外に太いホースしかなかったから仕方ないんだよ…」。厄年はまだまだ続きそうだ。

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