2012年3月-突風

 旧正月で静まり返った夕方、足りない食材を買うためにタマンデサのスーパー「スリ・コタ」へ寄った。周囲はいつもの活気がなくガランとしている。駐車場に車を停めた瞬間、豪雨に雷、いつもより強い風が吹き荒れた。こどもたちを車から降ろし、スーパーへ向かって歩いていると、尋常ではない風で周囲は騒然となった。向かい側のショップロットが見えないぐらい横殴りのひどい雨だ。これでは買い物が済んだところで出るに出られないし、「スリ・コタ」の上にある韓国レストランで夕飯でも取りながら雨がおさまるのを待とう。と、階段を上りかけた瞬間、「ごぉぉぉぉぉ」っと、唸るような風の音が響き渡った。レストランのドアを開けようとするが、窓を開け放した厨房から吹き込む暴風でドアが開かない。男3人がかりでドアを開けたとたん、ガラス窓の外で吹き荒れる風とともに、階下で営業するママッ・ストールの屋根が渦を巻くように回転しながら高く遠くへ飛ばされていった。木々が次々と、駐車中の車の上に倒れていく。食事中のカップルが、「車が心配だから移動させる」といい、店の外へ出て行った。

 突然、タマンデサを襲った突風。わずか10分の間に、閑静な住宅地タマンデサ一帯は荒れ果てた姿となった。突風がおさまり、店内の人々も「怖かったねぇ」などと口々に話し合いながら、皆が平常心を取り戻した時、ずぶ濡れになった、先ほどのカップルが戻ってきた。日本では、台風が局部的にある地域を襲い、暴風災害をもたらすことが年に1度や2度はある。こういったとき、私たちの常識としては、屋内に避難し、風がおさまるまでは外に出ない。が、先ほどのカップルは何を思ったのか、木が倒れてきては大変だと、暴風雨のなか車を移動させに行った。幸い怪我もなく、ただびしょ濡れになっただけで、人も車も無事だったからよかったものの、常識ハズレな彼らの行動に、私はたいそう驚いてしまった。

 我々が車を停めた位置は大きな木もなく、また風向きがよかったのか、傷ひとつなく無事であった。車を走らせ数メートル。街路樹、特に樹齢の高そうな大木がところかまわず倒れ、道を塞いでしまっているではないか。左に走って、大木に当たり、右に走ってはまた行き止まり。丘を中心に円を描くような住宅地タマンデサからメイン通りに出る道がほぼ塞がれてしまったのである。大木が引っかかり、その重みで電線がたるみ、停電となっている地区もある。留守中の実家や2人の義姉の家を心配して見回りながら、メイン通りに出る道へ急ぐ。3軒の無事を確認するもタマンデサから出られない。タマンデサ育ちである夫が丘を上り下りし、なんとかメイン通りに出られたのは、車を動かしてから、40分後のことであった。

 道すがら、大木の下敷きになり、ペッタンコになった車を数台みたときはぞっとした。コンドミニアムに住むある友人は家が揺れたといい、またある友人宅は窓が割れたと言っている。道沿いの屋台はすべて吹き飛ばされていた。旧正月で人出が少なかったからよかったものの、平日だったらけが人が多く出ていたかもしれない。さて、先ほどのママッ・ストール。帰り際に見てみると、屋根をどこからか持ち帰ってきて営業を再開しているではないか。マレーシア・ボレ〜!。

利秀

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