2012年9月-マレーシアのさくら

 7月の半ば。暑い日が続いた。雨も降らず、とにかく暑い。猛暑が続き、しばらくすると、1日に一度スコールに見舞われる。その頃のこと。犬と息子と家の近所のミニマートへ散歩がてら歩いていたとき、息子が前方を指差して言った。「ママ!サクラが咲いてる!」そちらへ目をやると、確かに、緑の葉っぱが覆い茂る背の高い木に、もっさりとピンクの花が咲き乱れているではないか。「ほんとだ!サクラみたいやねぇ。でも、これはサクラじゃないよ〜」と答えると、「こんなにキレイなピンクのお花がいっぱい!これはサクラだよ!」と息子は言い張る。遠めに見れば」、そんなふうに見えなくもないが、やはり、本物のサクラの美しさを知っている私にとっては、違和感があった。

 さて、その翌日。フェデラルハイウェイを昼間に通る機会があったのだが、行く先々で、息子が「サクラ」と呼んだ例の花が満開、美しく花を咲かせていた。10年マレーシアにいるが、この木の花があちこちで満開であるのを見たのは、いや、正確にいえば気がついたのは、今回が初めて。並木のピンクや白の花々は、それはそれは美しいものだった。夫に、「あの花、すごくきれいじゃない?あちこちで満開なんだよ」と話すと、「うわぁ〜!ほんまや。めっちゃきれいやなぁ。サクラみたい!」う〜ん。そうか。息子だけでなく、夫までも、この花をサクラと呼ぶのか…。サクラって、小さい花びらが身を寄せ合って咲き乱れる、なんとも繊細で美しいもの。この花とはちょっとイメージが違うのだが…。なんて思いながら、夫の会社付近を義母を乗せて車を走らせていると、また、満開のこの並木に出会った。「お義母さん、この花とってもきれいね?」と話かけると、「ほぉ〜んと、日本のサクラみたい!」と。おやまぁ!親子3代で同じコメント!!

 あまりにおもしろいので、娘の通う幼稚園付近で満開のこの花の写真を記念に撮った。家に戻ると、娘は夫に、「パパ、今日ね、ママはサクラの写真を撮ったんだよぉ〜!」と報告。むむむむむ。家族総出で「サクラ」と言われると、う〜ん、確かに遠くから見ればそう見えないこともないが…、と思えてくる。でも実際はラッパのような大きな花で、サクラとは似ても似つかない花。いかにも南国らしい、ダイナミックな咲き方なのだが、さて、この花。ローカルの友人など、誰に聞いてもみな首をかしげ、「サクラみたいな花」と口を揃えて言うばかり。私の家族だけではないのだ。そこで、フェイスブックに写真を載せてみたら、しばらく連絡を取っていなかった中華系の友人がSMSを送ってくれた。

 「コレは、中国語で風鈴木と言います。マレーシアのサクラとして親しまれています」と。

 風鈴木でネット検索、そこからいろいろ画像や和名を調べてみたら、「風鈴木」は「ノウゼンカズラ」という花だった。でも、木や花の感じがちょっと違うので、もう少し調べてみたら、「タベブイア(Tabebuia)」という名前の花であることがわかった。アジアにあるのっぽの木。カンボジアでは「カンボジアのサクラ」タイでは「タイのサクラ」、そして、マレーシアでは「マレーシアのサクラ」と本当に呼ばれているんだそう。

 10年見過ごした美しいサクラ。マレーシアのサクラも悪くないとしみじみ思った初夏であった。

利秀

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