2018年3月-チェンマイのマッサージ店

 私には日本の実家付近でお洋服屋さんをしている幼なじみの友だちがいる。彼女は年に一度、タイへアクセサリーや雑貨の買い付けに行くのだが、私はそんな彼女の仕事兼休暇に毎回便乗している。
 今回で6度目となるタイ2人旅。幼なじみはまず彼女の妹が住むKLを訪ね、その足で私と合流し、チェンマイへと向かった。
 出発当日、ちょうど私の夫が日本から早朝便で戻ってきたので自分の車に彼女を乗せ、KLIA2の出発ロビーで待っていた夫に車のキーを渡しチェックイン。夫は車に乗って自宅へと帰って行った。なんとも効率が良い。
 タイ旅行中、私たちの日課として食事同様に欠かせないのが、1日1回のマッサージだ。とにかく安いし、寂れたところでもマッサージ師の腕はそれなりに良い。今回はホテル付近の60代半ばのおばちゃんが2人いるだけの簡素なマッサージ店に足しげく通った。
 それとは別にチェンマイのまちを歩いて数日、気になるマッサージ店があった。外観もきれいだし、いつも客でいっぱい。メニューを見ると、われらが通うおばちゃんマッサージ店と200円も違わない。ここを試してみるかと訪れるも、予約でいっぱいだった。仕方がない。予約を入れ、翌日再訪することにした。
 「今までのマッサージで一番いい!」。施術後、開口一番われわれが発した言葉であった。皮肉にも、せっかく素晴らしい店を見つけたというのに、その日がチェンマイ最終日であったのだが…。
 この「Lila Thai Massage」、パンフレットによるとマッサージ師はじめスタッフが皆、チェンマイ女性刑務所に服役した女性たち。同刑務所はすでになくなっているのだが、そこで40年間勤務した元所長さんが2008年に店をオープンしたのだそう。現在は市内に6店舗を構え、どの店も多くの客で賑わっている。
 チェンマイ女性刑務所の服役者は違法ドラッグの運び屋などの「軽犯罪者」で、多くはシングルマザーであったり夫から虐待を受けた女性だそう。服役中にマッサージのトレーニングを受講したり調理の勉強をしたりするのだが、出所後は前科者ゆえに職に就けず、再び犯罪に手を染める者が多かったという。彼女たちが社会復帰できる場を提供するために、同店が開かれたというわけだ。
 服役中の女性はマッサージの「いろは」を180時間かけて学ぶ。マッサージ師は体力が必要な職種で年齢に伴い体力が低下し、働けなくなる人も出てくる。元所長さんはそういった女性のために同店のほかにもマンゴーデザートカフェも立ち上げ、多くの元服役者に職の機会を与えている。塀内外の温度差をよく知るからこそできる支援で、サービスの質の良さも納得できる。チェンマイを訪れる際はぜひ立ち寄っていただきたい。
 KLに戻り、この素晴らしい店について語る私の口を遮るように夫が言った。「そういえば、空港で警察に捕まったよ」と。なんでも、私たちと交代で車に乗り込む一部始終を警察官が見ていたのだそうだ。夫は女性2人と車を取り引きした窃盗犯と間違えられたそう。その場で事情聴取を受け、車の持ち主を照会し、夫所有の車であることを証明できたからよかったものの…。
 気のいい夫のおかげで私は来年もチェンマイへ行き、マッサージ三昧をもくろんでいる。

利秀

2018/02/27 | カテゴリー:KLのらりくらり徒然草

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