2018年6月-総選挙とフェイスブック

 5月9日に行われた第14回マレーシア総選挙。政権交代という歴史的な結果となったのは周知のとおり。私は取り立てて政治に関心があるわけでもなかったが、前回の総選挙で、ひどく落胆したことを鮮明に覚えている。結果、政権交代は実現しなかったものの、得票数で、当時の野党連合が与党連合を上回っており、これをバネに、5年間でマレーシアの国民の意識は大きく変わった。
今回、世界のメディアでは、与党連合(BN)の勝利が予想されていた。彼らに有利な運びとなってはいたけれど、野党連合(PH)からマハティール氏が出馬する時点で流れは激変した。というのも、そこからのFB(フェイスブック)の選挙関連の投稿内容、シェア数が圧倒的に増え、そこに多くの国民の思いが飛び交ったのだ。ズブの素人である私が言うのもおこがましいが、FBは政権交代に大きく影響したと思う。
2017年12月の統計によると、マレーシアのFB利用者数は2千200万人、約69%の普及率だ。(日本は同統計で55.8%)。書き込まれるコメントは、政治に詳しいであろう人もいるが、殆どが門外漢の一般ユーザーだ。しかし、そこには実直で、ときにウィットに富んだコメントが多数寄せられ、私は思わず口に含んだコーヒーを吹き出してしまうこともあった。
印象的だったのは、最終演説をナジブ氏はTV3で生放送、マハティール氏はFBのライブ配信を発表したこと。コメント欄には「え? TV3ってまだあるん?」、「今どきお茶の間に座ってテレビ? 誰が見る?」、「ナジブ氏は壁に向かって演説するに等しい」など、シニカルなコメントが続々と寄せられた。おもしろコメントにはLIKEが殺到。まるで笑点の「山田君! 一枚持っておいで!」状態だ。誹謗中傷、いわゆる「炎上」は極めて少なく、目には見えないけれど、身近に同士を感じ、民衆は結束を固め、「よっしゃ、選挙に行くぞ!」という意識を高めたと思うのだ。
投票日には青空にインクが染みた指を掲げる写真が出回った。そんな中、あるニュースが話題に。昼寝でうっかり寝過ごしたおっちゃん、午後4時20分に起き、猛ダッシュ! ギリギリセーフで一票投票! 「間に合わなければ一生後悔したよ!」とインタビューに応じるおっちゃん。マレーシア版「走れメロス」だ。おっちゃんの爆走写真に「かっこいい!」と称賛の嵐。いやいや…。そんな大切な日になんで昼寝してしもたん!? 
海外に住む友人が帰国したり、夫妻で投票会場が異なる者は遠路を車で移動したり。一票を投じるため、いくつものドラマがFBで話題となった。今後どうなるかはわからない。同じように腐敗するかもしれない。それでも、民衆が立ち上がれば、平和的に政権交代が実現できるという事実が証明されたのだ。3人のマレーシア人の子をもつ母として、これほどまでにマレーシア人を誇りに思うことはない。
12日、「家族と休暇をとる」と、ナジブ氏はマレーシア出国をFBで宣言。マハティール首相は迅速に対応し、ナジブ氏と夫人を国外出国禁止ブラックリストに入れたのだ。最後まで、FBの力を侮っていたナジブ氏は、地団駄踏んでいるに違いない。

利秀

2018/05/31 | カテゴリー:KLのらりくらり徒然草

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