2019年8月-ハエと煩悩

ある週末のこと。夫は海外出張中、悪ガキたちは夫の実家に泊まりに行って不在だった。私は友達と夕食を楽しみ、静かな我が家へ帰宅した。晩酌の準備をしてソファに深く身を沈める。…。何か様子がおかしい。黒いものがぷ~ん、ぷ~んと、目の前を横切るのだ。天井にはポツポツと黒いものが。これは、アル中の症状の一つ、虫が目の前をチラつく幻覚か? いや、違う。ハエが5、6匹、へばりついているのだ。一体どこから入ってきたのだろうか? もしかして、ねずみがどこかで死んでいるとか?
倉庫や台所を隈なく嗅ぎまわるも異臭はしない。ふと窓に目をやると、やはり、5、6匹のハエが。これは尋常ではない。
我が家の1階は、玄関から入ってすぐにテレビやソファがあり、その先にダイニングテーブル、キッチン、そして裏庭に続く。細長い間取りで、仕切りはなく、玄関から裏庭までひと続きになっている。そこそこの広さがあるとはいえ、室内にこんなにものハエがいるのはおかしいではないか。先ほど注いだばかりの焼酎と愛犬を3階の寝室に運び、家中の部屋のドアを閉めて、再び1階へ戻った。我が家にはフマキラーの蚊用の殺虫剤のみ。この大量のハエを駆除するにはこの一本に頼るしかないのだ。魚が泳ぐ水槽に入らないようにカバーを掛け、天井や壁に向かって思いっきりスプレーを噴射させながら、部屋の端から端まで小走りに駆け抜けた。鼻と口を押えて、寝室に駆け込む。これでハエは退治できるのだろうか。ドキドキしながら晩酌を再開。焼酎のロックは、すっかり水割りへと姿を変えていた…。
フマキラーのウェブサイト「https://fumakilla.jp/foryourlife/97/」やらアースの
「https://www.earth.jp/gaichu/knowledge/hae/」をみると、どうやら我が家に大量発生したのはイエバエの一種か。さらに調べると枯れた植木の鉢に卵を産み付け孵化することがあるという。1回の産卵は50~150個。幼虫は一週間で成熟し、乾いた場所で蛹になり、4~5日で成虫になるという。
しばらくして、下の様子を見に行った。「ズズズ、ズズズ、ズズズ」と音を立てながら何匹ものハエが床の上をのたうち回っている。その様子は、まさに「Buzzっている」のだ。鳥肌を立てながら踵を返し、今夜は眠ることにした。焼酎のおかわりは諦めて…。
翌朝、恐る恐る下におりた。床にはハエの死骸が。一匹ずつ数えながら箒で集める。途中、数匹元気なハエを見つけると、丸めた紙で叩き殺す。こんなに殺生をしてしまっていいのだろうか。しかし、野放しにはできない。計108匹。これは煩悩の数と同じではないか。こういう事態が発生すると、いつも夫に頼っていたのだが「お前もしっかりしろよ!」とのお告げだろうか。掃除をすませ、部屋の片隅にある空の植木鉢を覗いてみた。特におかしなところはない。籐のかごに入ったその植木鉢をそっと持ち上げると、かごの底にはおが屑のようなものが。これは羽化したハエの抜け殻だ。
まだ汚いものには触っていないのだから、決して不衛生ではないハエの子たちの大殺生に心が痛む。どうか成仏しておくれ。
「やれ打つな 蠅が手をすり 足をする」小林一茶の名句がよぎる。
利秀

2019/08/01 | カテゴリー:KLのらりくらり徒然草

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