招かれ猿客

 我が家の裏にLRTが通ることになるそうだ。そのためか、美しい緑を提供してくれた森林が伐採され、禿山が窓の外に広がっている。「選挙が終われば、その公約はなかったことになるのでは?」と言う見解もあるほどで、作業はチビチビと進んでおり、目下働いているのは一台のショベルカーのみだ。

 川を挟んで向こう側なのだが、木々はことごとく伐採され、私の家から見られるのは、むき出しの茶色い土砂。景観が損なわれていく様子に心を痛め、今後の騒音などが気にかかる日々。引越しを考えた時期もあったが、「LRTが通るのは川の向こう側だし、本当に実現するのかまだわからない」という夫の意見から、いまはただ、その作業を見守っている。

 そんなある日。子ども達を幼稚園に迎えに行こうと、車をバックさせながら、ふと3階のバルコニーを見上げた。なんだアレ?数えられるだけでも7匹、少なくとも10匹はいるであろう、猿の大群を目にした。なぜ我が家?他にもたくさん家が並んでいると言うのに、猿が集っているのはウチのバルコニーだけなのである。即、夫に連絡し、私はとりあえず子ども達を迎えに行った。家に戻ると、夫が3階のバルコニーからフライパンを持って顔を覗かせている。猿たちは散っていったらしい。

 マレーシアの猿は人懐っこい反面、非常にアグレッシブで子どもを攻撃したりするそうだ。

 猿が見られると喜んで戻った子ども達は、猿が去ったことにガッカリしながら、「バナナをあげたかった…」などとのんきなことを言っている。

 さて、その被害は…。我が家の3階はベッドルームとリビングルーム(TVが置いてあるだけ)がひと続きになっていて、リビングの奥に室内洗濯部屋があり、その境に扉が一つある。洗濯部屋からバルコニーがつづいているが、その間には窓と鉄製グリルがある。普段から、グリルの鍵は閉めているが窓は開けっ放し。だから、グリルの合間から猿が侵入し、洗濯部屋は強盗が入ったかのように荒らされていた。所かまわず糞をされ、獣臭い残りが漂う。リビングの扉を閉めていたので寝室に被害が及ばなかったのが不幸中の幸いであった。

 干していた洗濯物を一から洗いなおさねばならない。しかも、記述するのは恥ずかしいのだが、買ってきたばかりのお得用生理用ナプキンがすべて開封され、2階のバルコニーにばら撒かれていた。一つずつ丁寧に包まれた高級菓子と勘違いしたのだろうか。一つのこらずテープを外して中身を確認、「コレも空!ポイッ!コレも空!なんやねん、もぉ〜!」とヤケッパチになりながら窓の外にナプキンを捨てたのだろうか。後始末が大変だったのは言うまでもない。

 なぜ、我が家に猿が集まったのか。裏の森林伐採が原因と見られるが、よりによってなぜウチを選んでくれたのさ…。野良ネコが庭で出産したり、バッタとかたつむりが異常繁殖したり。ねずみの篭城はこの1年で3回。「動物にとっても居心地のよい家」なのだと諦め、棲みかを奪われた動物たちの緊急避難所として我が家を開放することにしている。

利秀

2011/06/05 | カテゴリー:KLのらりくらり徒然草

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