2011年8月-第10回

 

 -『ありがとう』は最高のほめ言葉- 

 

 子どもの自己肯定感を育むのがいちばん大事だという話をしてきましたが、そのために、いちばん簡単で有効な言葉は、「ありがとう」という言葉です。「ありがとう」という言葉は、お礼の言葉であると同時に、相手の存在価値を高める言葉です。われわれが、人から「ありがとう」と言われてどうしてうれしいのかというと、お礼を言ってくれたからうれしいというよりも「自分が人の役に立った」「自分がやったことに意味があった」と思えるからうれしいのです。特に、自己肯定感の低い子ども、「どうせおれなんか」と言うような子どもに、何かいいところを見つけて、「これ、君のおかげで助かったよ。ありがとうね」と言うとすごくうれしそうな顔をします。なぜかというと「どうせおれなんか、おらんほうがいい」と思い込んでいる。そういう自分に「ありがとう」と言ってもらえたということは、自分みたいな人間でもちょっとは人の役に立っているのかな、自分みたいな人間でも生きていてもいいかなと思えるのです。ですから、「ありがとう」という言葉は、相手の存在価値を高める言葉であり、最高のほめ言葉なのです。

 ある学校で、子どもたちにアンケートを取りました。大人からどういう言葉をかけてもらうとうれしいか。いろいろなほめ言葉があります。「頭がいいね」とか「かっこいいね」とか。ところがそのなかでトップに挙げられたのが、「ありがとう」という言葉でした。それほど、子どもたちは大人から「ありがとう」という言葉をかけられるとうれしいし、もっと言ってほしいのです。しかし意外と大人から子どもには「ありがとう」と言っていません。でも、子どもには求めますよね。「ありがとうは?」と。でも大人からも、ちょっとしたことでいいのです。左の物を右にやった、そういうことでも「ありがとうね。助かったよ」って言っていく。そういうことで、自己肯定感が育っていくのです。 

 「自分も人の役に立てるんだ」「自分も必要とされることがあるんだ」「自分も生きていていいんだ」、こう思える、自己肯定感こそが、生きる力そのものです。生きる力を育てる教育、それは、イコール自己肯定感を育む教育です。こういう土台があって、初めて勉強をがんばろうと思えたり、世の中のルールをきちんと守ろうと思ったりする、原動力となっていくということです。

明橋大二(あけはしだいじ)

 

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