
-
カリキュラムについて
クラン川に沿って発展したクアラルンプール(KL)とスランゴール州を併せた地域をクランバレー(Klang Valley)と呼びますが、この地域だけで100近いインターナショナルスクール(以下、インター校)があることはご存知ですか。マレーシア国内のインター校の半数以上がこの地域に集まっていますが、お子さんをインター校へ進学させることを決めた場合には、その中からお子さんに合った進学先を選びたいものです。そこで今回は、学校選びの重要なポイントとなる、各校が採用するカリキュラムの違いを中心にご説明します。
■マレーシアのインター校では、学校ごとに採用するカリキュラムが異なるインター校とひと口に言っても、それぞれの学校が採用しているカリキュラムは異なります。KLとその周辺にあり、英語で授業を行うインター校が採用している主なカリキュラムには次のものがあります。
■イギリス系カリキュラム【表1】KLとその周辺のインター校では最も一般的なカリキュラムで、試験科目や※1統一試験の種類により、ケンブリッジ式(CIE: Cambridge International Examinations)とエデクセル式(Edexcel)とに分かれますが、カリキュラム自体に大きな違いはありません。イギリス系カリキュラム採用校の大半は新年度が8月末から9月初旬に開講し、1学期(9月〜12月)、2学期(1月〜4月)、3学期(4月〜7月)の3学期制を採用しますが、1月初旬に新年度が開講し、1学期(1月〜4月)、2学期(5月〜7月)、3学期(8月〜11月)の3学期制を採用する学校もあります。
9月に新年度が始まる学校では11年生の5月~6月(履修科目によっては10年生の10月~11月)に、また1月に新年度が始まる学校では同じく11年生の10月~11月(履修科目によっては10年生の5月~6月)に、イギリスの義務教育修了証書に当たるIGCSE(International General Certificate of Secondary Education)取得のための統一試験を受験します。この試験では科目ごとにA〜Gの7段階評価で評価され、5科目以上で平均評定がC以上(ただし、必修科目の英語と数学はそれぞれがC以上)ならば合格となり、義務教育修了証書を取得することができます。
なお、IGCSEを修了しても、この時点では年齢に関係なく、大学入学資格を取得することはできません。大学入学資格取得には、さらに※2大学進学予備課程を修了する必要があります。表1はイギリス系カリキュラムの大学進学予備課程で、一般的にAレベル(Cambridge International Advanced Levels、通称A Levels)と呼ばれているものです。なお、学校によってはこのIGCSEまでのカリキュラムしかないところもあり、そういった学校でIGCSEを終了した場合には、Aレベルを他のインター校やCollegeと呼ばれる教育機関で履修する必要があります。
13年生の最終学期(履修科目によっては12年生の最終学期)に3〜4科目のAレベルの統一試験を受験します。イギリス系カリキュラムでは、この試験の成績が大学進学の際の合否判断の基準となります。また、このAレベルの成績は日本も含めイギリス以外の国の大学入学資格にもなります。■アメリカ系カリキュラム【表2】アメリカ国内には、イギリス系カリキュラムに見られるような統一カリキュラムがないため、KLとその周辺で「アメリカ系カリキュラム」を採用しているInternational School of Kuala Lumpur(ISKL)、Mont Kiara International School (MKIS)、Oasis International School of Kuala Lumpur(OISKL)はいずれも※3WASC(米国西部地域私立学校大学協会)やCIS(インターナショナルスクール評議会)といったアメリカ国内にある資格認定団体の認定に基づく大学入学資格が取得できる学校です。
いずれの学校も新年度は8月上旬に開講し、1学期(8月〜12月)、2学期(1月〜6月)の2学期制を採用しています。
アメリカ系カリキュラムは統一試験がなく、日本のシステムに似たカリキュラムです。ISKLを例にあげると、High schoolを卒業するためには22単位の取得が必要です。すべての単位を取得すると高校卒業証書(High school diploma)を取得することができ、この証書は日本を含めたアメリカ以外の国の大学入学資格にもなります。■カナダ系カリキュラム【表3】カナダは各州によりカリキュラムが異なり、KLとその周辺で唯一のカナダ系カリキュラム採用校であるSunway International School(SIS)は、オンタリオ州のカリキュラムに基づき、第1学期(1月〜6月)と第2学期(7月〜11月)の2学期制を採用しています。なおSISでは、7、8年生は1月に新年度が始まりますが、9〜12年生については、新年度開始が1月からと7月からの年2回になっています。このため、1月入学の生徒は1月から11月まで、7月入学の生徒は7月から翌年の6月までが1学年となります。
また最終学年となる12年生は、SISに併設されているSunway CollegeでCIMP(Canadian International Matriculation Program)の授業を受講して、オンタリオ州の高校卒業資格および大学進学資格を取得します。なお入学時期により、このCIMPの卒業時期もそれぞれ、11月と6月の2回となっています。
10年生の3、4月に受験するOSSLTと呼ばれる英語の統一試験に合格し、さらに12年生終了時のCIMPの試験で50%以上の成績を収めることがオンタリオ州の高等学校修了証OSSD(Ontario Secondary School Diploma)を取得するための要件となっています。CIMPの成績はカナダの大学進学の際の合否判断の基準となり、また日本も含めたカナダ以外の国の大学入学資格にもなります。■オーストラリア系カリキュラム【表4】オーストラリアも、カナダ同様、各州でカリキュラムが異なります。Australian International School Malaysia(AISM)は、オーストラリアのニューサウスウェールズ州のカリキュラムを採用し、またPeninsula International School Australia(PISA)は同ヴィクトリア州のカリキュラムを採用しています。両校ともに、第1学期(1月~3月)、第2学期(4月~6月)、第3学期(7月~9月)、第4学期(10月~12月)の4学期制で授業を行っています。
オーストラリアのカリキュラムでは最終学年となる12年生の最終学期に、高校卒業資格となる高等教育修了証を取得するための統一試験を受験します。AISMはHigher School Certificate(HSC)が、PISAではVictorian Certificate of Education(VCE)が高校教育修了証にあたり、その成績はオーストラリアの大学へ進学する際の合否判断の基準となり、また資格自体は日本も含めオーストラリア以外の国の大学入学資格にもなります。■国際バカロレア(IB)カリキュラム【表5】これまで紹介した各国の教育カリキュラムとは別に、スイスの国際バカロレア機関が認定する国際バカロレア(通称IB、正式名称はInternational Baccalaureate)カリキュラムを採用する学校もあります。
IGB(IGB International School)とFIS(Fairview International School)は、小学生相当のIBプログラムであるPrimary Years Program(PYP)、中学高校生相当のIBプログラムであるMiddle Years Program(MYP)、そして世界各国で大学入学資格として通用するIBプログラムであるDiploma Program(IBDP)を開講しています。
ISKLやMKISは、アメリカ系カリキュラムと並行してIBDPも採用しており、生徒が自由に選択できるようになっています。またSISでも従来のカナダ系カリキュラムに加え、このIBDPが選択できるようになっています。
この他でも、Sri KDU、Nexus International School、St Joseph's Institutionでは、11年生まではイギリス系のカリキュラムでIGCSEを履修し、12~13年生の最終2学年ではIBDPを履修するなど、複数のインター校が大学入学資格取得にこのIBDPを採用するようになってきています。
IGBとFISはいずれも新年度は8月上旬に開講し、1学期(8月〜12月)、2学期(1月〜6月)の2学期制を採用しています。
大学進学資格となるIBDPの授業は、6つの科目グループと「知識の理論」(TOK: Theory of Knowledge)、「創造性・活動・奉仕」(CAS:Creativity・Action・Service)、「課題論文」(EE:Extended Essay)の3つの要件で構成されています。IBDPの取得を希望する生徒は、この6つの科目グループそれぞれから一つずつ科目を履修します。なお6つの科目のうち、3〜4科目は上級レベル(HL:Higher Level)、残りの2〜3科目は標準レベル(SL:Standard Level)で履修しなければなりません。IBDPの授業期間終了時に統一試験を受験し、各科目は1〜7の7段階評価で点数化され、IBDP取得のためには、それぞれの科目で最低4ポイント、合計24ポイントの取得が必要となります。さらに上記の3つの要件(EE、TOK、CAS)を満たすことが必要であり、EEとTOKの両方の成績が3点まで加算されます。満点は7点×6科目グループ+EEおよびTOKの3点で45点です。